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第6話 美香

last update Last Updated: 2025-09-22 06:00:00

──うわ〜〜ついに推しと付き合うことになったよ! あ〜〜いっぱいキスしちゃった。

凄く良かった、ヒロさんのキス。今でもまだあの感触が残っている感じがする。

ヒロさんが帰った途端、私は、今日のことを振り返って、恥ずかしくもあり、嬉しくもあり、1人でニヤニヤしてしまっていた。

「ホント今日は、一度に色んなことがあったなあ。あっ! 美香に報告しよ!」

「あ、待って! 美香に言っても良いのかなあ? 先にヒロさんに確認しなきゃ」

ヒロさんに、初めて個人メッセージを送った。

いつもは、会社のグループメッセージからだから。

今日のお礼を送って、

親友の美香にだけは、話しても良いかと確認すると、〈OK、良いよ〉と返って来た。

〈気をつけてね〉とバイバイの絵文字、ついでにキスマークのスタンプを送っておいた。

すると、ぎゅっと抱きしめ合っている可愛い熊のスタンプが返って来た。

「きゃ〜可愛い〜! こんなスタンプ使うんだ」

と思って嬉しくなった。

──でも、なんだかエロい

と1人ニヤける

ただスタンプを送り合うだけなのに、もう楽しい。

「ふふ」

そして、早速

美香にメッセージを送った。

〈推しと付き合うことになりました♡〉

〈えーーーーーーーーーーーーーーー!〉

と、物凄く長い驚きをいただきました。

「ハハハハハッ、どんだけ長いのよ!」

〈マジ?〉

〈うん、マジ〉

〈電話する!〉と、速攻電話がかかって来た。

「待て待て待て待て、何? どうした? いきなり、どういうことよ!」と興奮気味の美香、

そりゃあそうだよね。

「ふふ、そうなるよね〜」と、私も驚いた旨を話した。

そして、ついさっきまで、私の部屋で一緒に過ごしたことを話した。

「凄っ! いや〜ん、田上たがみっち、急に積極的じゃん!」

「うん、凄く嬉しかった」

「うわ〜マジおめでとう〜! 良かったね、ひまり」

「うん、ありがとう、まだ夢みたい」

「ねえ、で、どこまでしたの?」といきなり聞かれた。

「ちょっと〜! 言い方」

「あ、ごめん。で?」と興味津々だ。

美香には、私がまだ男性経験がないことは、話している。

なので、

「まさか?」と聞いてきた。

「ううん、正直に話したから、凄く大事にしてくれてる。少しずつ進もうって」

「おお〜そっかそっか、さすが田上っち、ちゃんと考えてくれてるじゃん!」と少し安堵しているようだ。

「うん」

ニヤニヤが止まらない。

「でも、いっぱいキスしちゃった」と私が言うと、

「えーーーーーー! ひまり、急成長じゃん! おめでとう!」と言う。

「ふふ、ありがと、でもキスぐらい経験あるわよ」

「いや、そうだけど……貴重な推しとのキスだよ!

しかもいっぱいって、イヤ〜ん」

バンバンと何かを叩く音がする。

私の方がヒロさんのキスにハマっている旨を話すと、

「そうなんだ〜田上っち、そんなにキスがお上手なんだ〜」と、ねっとりした感じで言う美香。

「あんなの初めて。なんだかグッと堕ちる感じ!」

「やだ〜素敵〜! 相性バッチリじゃん! これなら、そろそろ···も近いな」

「そうなのかなあ? なんだか私おかしいのかなって思うぐらい、何度でもして欲しくなっちゃって」

「きゃ〜! どハマり! 良いじゃん! 田上っちのこと大好きな証拠だね」

「やっぱそうだよね?」

「きっとそうだよ! 好きなひとのキスは、超気持ち良いって言うから」

「美香も?」

「そうだよ〜ふふふ」

美香に言われれば言われるほど、照れてしまうが、··が居てくれて良かったと思った。

「で、なんて呼び合うの?」と茶化すように聞かれる。

「あ〜〜、私は、最初からずっとひまりって呼ばれてるから、ヒロさん」

「ヒロさん! ふふふふっ、良き良き」

と、いちいちバンバン叩いている音がする。

「ねえ〜美香? さっきから何叩いてるの?」

「あ、テーブル、もうニヤニヤしちゃって」

「ふふ」

「で、その····には次、2人でいつ会うの?」

「明日」

「えーー! もうラブラブじゃん! 早くやっちゃえ!」

「ちょっと、美香!」

「いや、ホントに近いなコレは! 私の方がドキドキするよ、ふふふふ。

あ、ひまり! もうすぐ誕生日でしょ?」

「うん」

「22歳の記念にするか、21歳中にするかだよね〜楽しみ〜」

──ホントだ! 5月7日、もうすぐ誕生日だ

そして、ヒロさんが1人暮らしをする部屋を、明日見に行くのについて行くと話すと、

「もうそれって一緒に住むつもりなんじゃない?」

「あ〜〜」

最初にそんな話をチラッとされたことも伝えた。

「でもまだハッキリとは……」

「うわ、もうこれは、同棲からの結婚を考えてるな、田上っちスゲー! 行動が一気に加速!」と喜ぶ美香。

そして、女同士の相談として、···のことについて詳しく聞いてみた。

「もし、そういう雰囲気になったら?」

それは私次第で、ヒロさんのことを、この1年ずっと想い続けて来たのだから、良いと思えれば、それがタイミングだ! と美香は言う。

私がお婆ちゃん子で、いつも結構古くさいことを言ってるから、友達にも『まさか、結婚するまでは! とか思ってないよね?』とも言われたことがある。

今は、そんなことは、思っていない。

どちらかと言えば、今日のことがあって、もっとヒロさんのことが知りたくなったし、ずっと一緒に居たいと思ってしまったのだから。

「ひまりがこの人だって思ってるなら、良いんじゃないの? ちゃんと避妊さえすれば」

「だよね、まだ子どもは早いよ。うん、私もヒロさんが良いと思ってるわけだし……美香! 何か注意点とかある?」

「注意点? ふふ受験かよ!」と笑われた。

「だって〜」

「あ〜そうだよね、そうだなあ〜出来れば、おニューの下着で行く方が良いかな?」

「あ、そうだよね」

ヨレヨレじゃあダメよね、ヨレヨレのなんて手放してもう無いけどね。気をつけなきゃね。

「たとえば、どんなのが良い?」と聞いてみた。

「う〜ん、ま、とりあえず、ひまりのお気に入りで良いんじゃない? あ、でも、うさぎはダメよ!

可愛い過ぎるうさぎは、萎えるわ。少しはエロい方が良いかも、今度一緒に買いに行こう! あ、もしも明日がXデーだったら、諦めて綺麗めなので行って!」

「エロいの、なんてあるかなあ? 綺麗めレースとか?」

「うん! やっぱ、ひまりにエロいのは、まだ早いか。清純派だな。まだ黒じゃなく純白って感じだもん。ピンクとかも可愛いくて良いかもね。

まあ、あとのことは、田上っちにお任せすれば良いと思うよ。ふふ」

「うん、分かった! ありがとう」

早速下着の選別をしなきゃなと思った。

「あ、それと、本当に注意点として言っておくなら、···は、少し痛いかも……」

「え、そうなの?」

そう言えば、高校生の時に、皆んなでそんな話をしていたら、既に経験済みの子が、そう話していたな、と思い出した。

「うん、人にも寄るけど、やっぱり···だから狭いのよ! でも田上っちのテクニックにもよるし、そのうち、ひまりがハマってるキスみたいに、もっと欲しくなるかもよ〜ふふふ」

美香、どれだけ経験してるのだろう、とちょっと引いた。

「ひまりのことだから、少し調べてから挑んだ方が驚きも少なくて良いかもね、健闘を祈る!」

「ありがとう」

「じゃあ、また報告してね〜あ、彼氏来たからごめんね〜」

「うん、あ、ごめんね、ありがとう」

え、こんな時間に彼氏? もうすぐ夜中0時、お泊まりかなあ?

凄いな美香って……

やっぱり私の··だわ、色々教えてもらわなきゃと思った。

時計を見ながら、ヒロさんもうお家に着いたかなあ? と思っていると、ちょうど、

〈今、着きました!〉と連絡が来た。

〈お疲れ様でした〉と返すと、

〈明日も会える! 楽しみにしてる〉と返信が来た。

「きゃあ〜私も嬉しいし、楽しみだよ〜」と、うさぎを抱きしめる。

〈うん、私も楽しみにしてるね、おやすみなさい〉

「キスマークのスタンプ、送っちゃおう」

〈おやすみ〉

キスマークのスタンプが返って来た。

「ふふ、はあ〜愛おしい!」

ムギュッと抱きしめられたうさぎは、顔が潰れそうだ。

もしかして、美香が言うように、ヒロさんも明日がXデーとか思ってるのかなあ?

いや、そんなことないよね〜

と、思いながら、私はネット検索をしてしまった。

すると、体験談と共に、エロ画像が目に入って、

ビックリして閉じた。

「何今の!」

でも、体験談だけ読みたい、知りたい! と思って開いて読んだ。

やはり、〈最初の数回は、痛くてしょうがない〉とか、〈出血した〉とか書いてある。

〈皆が出血するわけではない〉とも医師の意見も書いてある。

「そうなんだ」

〈避妊具には、色々な種類があって、最も手軽に購入出来る避妊具は、コンドーム。避妊する目的だけでなく、性病感染予防にも役立つので、重要だ〉と書かれている。

「そうだよね、あ〜ピルもあるよね。でも病院で処方してもらわなきゃ」

そう言えば、短大の時の友達が、『しばらく痛くて何が良いの? と思ってたけど、最近は凄く良いの』とリアルなことを言っていた。

何が良いのか、まだ私には未知の世界だ。

学生の頃は、そういうことへの憧れはあったが、今は、憧れよりも、ただ好きな人のそばにいたいという思いが強くて、その先に付随してくる物なのかなと思っている。

ヒロさんが、『俺が耐えられなくなるからだぞ』と言っていたことを思い出した。

やっぱり私の為に我慢してくれているのだと思った。

でも、今は私もヒロさんの全部を知りたいと思ってしまっている。

反対に、少し怖いとも思っている自分もまだいて複雑だ。

「コレって、やっぱり流れだよね、今日だって、あんなに素敵なキスをする人だとは思わなかったし」

と独り言を言う。

でも、どうして過去の人たちは、ヒロさんと別れちゃったんだろう?

やっぱり、マメじゃなかったって言ってたからなのかなあ。

今は、すぐに返信もくれるし、凄く愛を感じる。

それに今は、社会人で立派な大人だし、学生の頃は、少し子どもっぽかったのかな。

「あ、アクスタ!」

と、突然クローゼットにしまったままの『田上大翔 限定アクスタ』を思い出して、慌てて出した。

「ごめんね〜うさぎちゃんたちも……」と思ったが、

──いや、待てよ! もし明日もウチに来るなら……

と、思うと「ごめんね、そのうち紹介するから、しばらくココで寝ててくれる?」と籠に入ったままのうさぎちゃんたちを綺麗に並べ直して、そのままクローゼットの中にしまった。

アクスタだけは、一緒に寝ようと枕元へ

明日、楽しみだ チュッとアクスタにキスをする。

そして、お風呂に入ってからベッドへ

「おやすみ、ヒロさん」

「あ〜もう会いた〜い!」

「あ、下着……」

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